社会人として必要な能力群を身につけるのに
有効な教授・学習法

座学だけで社会人基礎力を育てることは困難

アクティブラーニングとは、学生参加型・学生主体型の教授・学習法です。グループディスカッション、ディベート、グループワークなどを通して、学びの場に積極的に参加しながら自ら考え、自ら能動的に学ぶというもの。本学では、2014年より組織的なアクティブラーニングの導入を行ってきました。その成果を検証した結果、アクティブラーニングが学生を成長させることは明らかです。

ここで言う「成長」とは、社会人として必要な能力群を身につけるという意味です。つまり、リーダーシップ、コミュニケーション能力、感情をコントロールする力、学びに対する意欲、やり抜く力、計画立案力、実践力など、学問分野の知識習得にとどまらない人間の能力全体を含む「成長」です。一般に「コンピテンシー」や「社会人基礎力」と呼ばれるそれらの能力を育成する教育手法として、アクティブラーニングは有効だということです。

学生のコンピテンシーが、本学短期大学部ライフデザイン学科の教育プログラムによって伸びたのか、どのような要因によって伸びたのかを分析を行いました。アセスメントテストを利用して、個人の社会人基礎力を客観的に評価するものです。

その結果、1年次から2年次にかけて、学生の社会人基礎力は全体的に伸びていました。特に伸びが大きかったのは「自信創出力」です。他者との違いを認めた上で自分の強みを認識でき、やればできるという見通しを持つことができ、学びの機会をとらえて自分の成長に活かすことができる、そんな力のことです。

コンピテンシーが伸びた学生の、学習活動に関するアンケートやインタビューの内容を見ると、「グループワークの中で積極的にリーダー的役割を担う」「身につけた知識をもとに新しい企画提案をする」「目標に向けて懸命に努力する」などを大学での学びの中で経験していることがわかりました。いずれもアクティブラーニング型の授業の中で経験できるものです。さらに面白いのは、「情報を収集して自分の考えをまとめたレポートを作成する力」の高さと、コンピテンシーの伸びの間には相関が見られなかったということです。つまり、従来型の学習だけでコンピテンシーを育てることは困難だということも明らかになったのです。

本物の挙式をプロデュースする経験を通して大きく成長

社会からの評価を受けて「自信創出力」が高まる

本学でどのようなアクティブラーニングが実践されているか、私の担当科目「ブライダル演習」の例をご紹介しましょう。2年生で履修するこの科目は、主にブライダル業界への就職を希望する学生が、社会で必要とされるスキルや能力を習得するものです。ブライダル業界で活躍するためには、専門的な知識だけではなく、人生の一大イベントである結婚式という高額商品を取り扱うにふさわしい人間力やホスピタイリティマインドが必要です。そこで私は、この科目でアクティブラーニングの一つの手法であるPBL(Project Based Learning)を導入しました。授業の中で、本物の挙式を行うというものです。挙式の会場は基本的には大学のキャンパス。オープンキャンパスの日に、多くの高校生もいる中で行います。

新郎新婦との打ち合わせに始まり、プランニング、提案、挙式開催という一連のプロセスを、学生自身が、それまでに学んだ知識と、自分自身の人間としての能力を最大限に活かして進めていきます。限られたリソースの中で、新郎新婦にいかに喜んでもらえるか、高校生にいかに感動してもらえるかを目的に、学生にとってはまったく初めてとなる経験に挑戦するのです。

たとえば打ち合わせの場面でも、最初から新郎新婦は自分たちの希望を具体的に語ってくれるわけではありません。言葉の端々から意図を深くくみ取り、最良のプランをこちらから提出しなければならないのです。プランを組み立てるためにはブライダルに関して相当の知識が必要となるため、学生たちは走りながら学び、想定外の問題に一つひとつ対応しながら、本番に向けて綿密に準備を進めます。トラブルの発生も事前に想定して準備するのですが、それでも予期せぬハプニングは起きます。かつてBGMが止まるという事態が発生したことがありました。それでも学生たちが協力しながら対応できていたのは素晴らしかったですし、良い経験にもなったと思います。

授業の中で大きく成長した学生を何人も見てきました。欠席が多く、学びに対する意欲も低く、このままでは卒業が危ぶまれる学生が、この授業だけは受けたいと履修したことがあります。意欲的なメンバーの中で自分の意見が採用されたり、それを一緒に実践したりする中で態度が変わっていき、メンバーも彼女をサポートした結果、無事に卒業でき、就職も決まりました。さらに嬉しかったのは、昨年、その卒業生の結婚式をプロデュースさせてもらえたことです。授業をきっかけに大学生活を立て直してくれただけでなく、卒業後も後輩のために協力してくれる、こんなに嬉しいことはありません。

ブライダルコーディネーターとして社会で活躍する卒業生も授業に協力してくれています。学生にとっては夢を実現した憧れの先輩。今の学びが将来に直結することも実感でき、キャリア意識を高めることにもつながっています。

リアルな挙式のプロデュースを経験することによって、学生は座学だけでは学べない多くのことを学び、人間的にも成長します。新郎新婦からの感謝の言葉は、リアルな社会からの評価だけに自信にもなります。これらの経験を通して、学生は、やればできるという見通しを持つことができ、学びの機会をとらえて自分の成長に活かすことができる「自信創出力」を高めることができるのではないでしょうか。

短期大学こそアクティブラーニングが必要

短期大学は4年制大学と違い、初年次教育、キャリア教育、専門分野の教育、それぞれを1年ごとに積み上げていくような教育はできません。だからこそアクティブラーニングが必要だと私は考えています。専門教育の中で、初年次教育もキャリア教育も同時に構成していくことが、学生の成長につながりやすいと思うからです。

バスケットボール部でたとえてみましょう。地味なパス練習やドリブル練習を積み重ねた後、練習試合をし、ようやく公式の試合に出るという流れが標準的でしょう。それとは違い「時間が限られているから今のスキルで試合に出てしまおう!」これが短期大学のアクティブラーニングです。試合に出てみると、実践を通して自分に足りないところがいやというほどわかりますよね。そうすると、パス練習をしよう、ドリブル練習をしよう、シュート練習すれば得点できるようになるかもしれないという意識を持てるようになるはずです。もしかしたら、目的がわからないままひたすらパス練習をするより楽しいかもしれません。

「ブライタル演習」のプロジェクトの中でも、「良い提案ができなかったのはこの分野の知識が足りなかったからだ」とテキストを読み返す場面が多々あると思います。必要な知識は実践の中で学んでいけば良いのです。明確な目的があれば、知識もより身につきやすくなるでしょう。私の担当科目に限らず、アクティブラーニング型の授業では楽しそうに学ぶ学生の笑顔が多く見られます。自分自身で成長している実感が持てるようになると、さらなる成長も期待できるのではないでしょうか。教育目標を実現するための有効な方法として、本学では、アクティブラーニングをさらに積極的に導入する流れができています。

究め人のサイドストーリー

休日はスポーツクラブでホットヨガをしたり、家庭菜園でゴーヤや水菜などの野菜を育てたり、大好きな車を眺めたり、ドライブしたり、なにもかも忘れて没頭できる時間を楽しんでいます。ヨガを始めたのは4年ほど前。それまでは身体が硬くて、つまずいたり転んだりした拍子によくケガしていたのですが、続けるうちに関節も筋肉もしなやかになり、つまずくこともなくなりました。呼吸も深くなって、健康な身体を維持できています。たっぷり汗をかいた後は気持ちもすっきりしますね。

※画像はイメージです。

高校生へのメッセージ

手書きメッセージ

大学は、人生の大切な4年間もしくは2年間を過ごす場。自分の成長が期待できる大学かどうかをしっかり見極めて選んでください。アクティブラーニングを積極的に導入しているかどうかも大切な視点です。在学生を見て、「こんな風になりたい」と思えるかどうかも大切なポイントかもしれませんね。卒業後の自分がはっきりイメージできる大学に入学して、思い切り学び、いろいろな経験をして成長してほしいと思います。

小山 理子教授

短期大学部 ライフデザイン学科

同志社大学総合政策科学研究科博士(前期)課程修了。修士(政策科学)。京都大学教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。一般企業勤務を経て2012年より現職。現在、ライフデザイン学科長。公益社団法人日本ブライダル文化振興協会ブライダルコーディネート技能検定委員。研究テーマは、キャリア教育やアクティブラーニングの視点からのブライダル、高等教育。

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短期大学部 ライフデザイン学科

興味や将来の夢に合わせて幅広く学び、専門知識と技術、教養を身につけます。自らの未来をデザインし、社会に生かせる力を育成します。

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