2015年度 日本の伝統美「和のテイスト」研究会

「文楽」を鑑賞し、ホンモノの舞台芸術の迫力と繊細さを学びました。

2015年7月19日

今回は大阪日本橋の国立文楽劇場へ出かけ、「文楽公演」を鑑賞してきました。
あいにく都合がつかず、参加したメンバーは少なかったのですが、文学科、キャリア形成学科それぞれのゼミ生と、今夏本学に迎えているカナダのリジャイナ大学からの語学研修生や教職員との団体鑑賞となりました。

w    ww
 
この公演は、古典芸能を、特に若い人たちに普及するためにと、文楽をワンコイン(500円)で鑑賞させていただけるありがたい企画。加えて本学文学科教授との長年のご縁で、出演される大夫さんや人形遣いの方からその歴史や約束事、鑑賞の仕方などのお話しと、実際に使っておられる貴重なお道具を見せていただける特典付きの会でした。

wwww

レクチャーに来てくださったのは豊竹咲甫大夫さん。技芸員としての舞台公演とともに、学校をはじめさまざまな場で、文楽を通しての伝統文化の普及活動にご活躍の方です。文楽の起源、大阪の地との縁故、これからの展望などの解説に続いて、大夫さんならではの貴重なお話しを伺うことができました。

wwwwww  wwwwwww

大きな声で語るため、正座しつつも踵を上げて腰を落とし、お尻に「しりひき」をあてがい、下腹に腹帯を締め、「おとし」という小豆粒の入った細長い枕のような重石を懐中するという居住い。舞台でなぜか三味線の方より大夫さんが大きく見えていたのはこれだったのかと納得。このしりひきも修理をしながら何代も受け継がれている「年代物」だそうですが、ずっと舞台で活躍しているとはすごい!!咲甫大夫さんが紹介をしながら、大切そうにこの小さな道具を見ておられたのが印象的でした。
さらに語りの詞章が書かれた本「床本(ゆかほん)」と、それを置くための豪華な蒔絵の「見台」の解説も伺いました。

www  wwwww

伝統の「統」の字は、もともと「灯」であって、この灯の油が断たれて火が消えてしまうことから「油断」と言う言葉が生まれたという説があること、“伝統とは、まさに先人の魂の火を断つことなく伝えることと”の真剣なお話とともに、通常の舞台公演では大夫さんが自分と組む三味線の方の装束(裃)を揃えて準備されというような「楽屋話」も聞くことができました。さらに、大夫さんのお名前に豊竹・竹本と「竹」がついているのは、竹はまっすぐに伸び「節」が大切であるからとの「なるほど話」も交え、初心者にもわかりやすい、とても楽しい解説をしていただけました。その後、資料展示室で貴重な文献やお道具も見学しました。

wwwwwwww     wwwwwwwwwww

鑑賞した舞台は『生写朝顔話』の前半で、大夫の語り、三味線の奏楽、人形(人形遣い)が「三位一体」となって織りなされる総合芸術であることを実感しました。はかなげであったり、コミカルであったり、悲壮感があったり。。。また、26年振りに上演されると伺った「薬売りの段」は、解説をしてくださった咲甫大夫さんが登場、迫力ある舞台に、先ほどの解説への感謝も込めて、一層大きな拍手を送りました。

文楽は、先日鑑賞した能楽と同様に、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。文楽協会のHPに「文楽とは、物語を語る『大夫』 情景を音で表現する『三味線』 一体の人形を三人で遣う『人形』 この『三業』が一つとなり、舞台から観客へ感動をお届けする世界に誇る我が国の代表的な古典芸能です」とあります。
世界が認める日本の素晴らしい芸術、ホンモノ中のホンモノに間近に触れることができるこの環境を活かして、日本の伝統文化を世界に伝えられる様、教養と感性を磨いていきましょう。