2018年度 日本の伝統美「和のテイスト」研究会

本学が所有する貴重な「王朝衣装(十二単衣・直衣)」を使っての着装研究が始まりました。 

2018年7月27日

今回からいよいよ「王朝衣装」の学びを始めました。

本学では「王朝衣装」として、奈良・平安時代以降の公家の女性の晴れ装束である「女房装束」と、公家の男性の正装「束帯(そくたい)装束」、常着「直衣(のうし)装束」を所蔵しています。

昭和56年、京都の大学ならではのホンモノの装束をと当時の短期大学家政科 故野上俊子名誉教授が中心となり、日本の風俗史の第一人者 江馬務先生の監修のもと、葵祭をはじめとする装束の制作をされているを黒田装束店で誂えたものです。装束はもちろん、烏帽子・檜扇・襪(しとうず:後世の足袋)などすべて有職故実(ゆうそくこじつ)に則った大変貴重なものです。この装束は長年、学生の授業と併せて一般の皆さまにも着装の講座として公開して参りましたが、将来、衣紋者(えもんじゃ: 着付けをする人)の後継者を養成するためにも、当「学Booo」メンバーと教職員が勉強をしていくことにいたしました。

 

今回は、本学園伝統文化教育で長年ご縁のある先生を特別講師にお迎えし、まずは学生を「お方さま」(着装してもらう人)に、職員に衣紋者の所作や着付けの仕方をご指導いただきました。

装束を畳紙(たとうがみ・たとうし:敷紙のこと)から取り出し、着装する順を確認しながら重ねて置く準備がてきて一同、ホッ。いよいよ着付けの稽古のはじまりです。小袖、続いて緋色の長袴で一般には既婚者の色、未婚者が濃き色(濃い紫)と訊きました。すべて意味があり、約束事が守られています。

続いて単衣、ここからは衣紋紐2本のみで着付けていきます。襟もとが動かないように抑えつつ、右袖から袖口を持って袖を伸ばし、前方がお方さまの右手を袖へ、続いて左。前方が衣紋襞(箱ひだ)をとって襟を打ち合わせて胸の上の方から沿わせて衣紋紐を当て後方に回し、背中心で交差して前に来て結ぶ、後方も衣紋襞をとって形を整える。次の装束を重ねて同じ動作を繰り返し、前方は先に結んだ衣紋紐を引き抜く。。。この繰り返しで打衣(うちぎぬ)→表着(うわぎ)まで着付けていきます。単衣・五衣(いつつぎぬ)とも呼ぶ袿(うちぎ)・打衣・表着までの合計8枚がこの着付け方です。

 

まずは薄萌黄色(うすもえぎいろ)の単衣を着し、次がいよいよ袿(うちぎ)、いわゆる五衣(いつつぎぬ)です。「山吹匂襲(やまぶきのにおいがさね)」という襲色目、黄色というより優しい桃色と朱色の間のような色合いの濃淡で、薄い色から濃い色へと重ね着していき、襟・袖・裾に美しいグラデーションができ上がっていきます。袿の山吹の花の色の下に、控え目に見える単衣の葉の色、これこそ日本人の繊細な美意識と実感。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番上に着するのは色も鮮やかな蘇芳色(裏は縹色の板引き)の唐衣、最後に裳を着し、小腰という紐を前で結んで、すべての装束を固定することになります。懐紙を懐中し、檜扇を持って完了、衣紋者はお方さまに礼をして終了です。

礼に始まり、礼に終わる和の文化を体験し、姿勢も正しく清々しい時間を過ごせました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本学には、触れる機会さえ得難い貴重な王朝装束を実際に着付けて学ぶという恵まれた環境があります。
歴史・文化・服飾美の知識習得、衣紋の体得とともに、古来より日本人が大切にしてきた「美しさ」への感性を大いに磨いてほしいと願っています。

 

次回は後期、書と着物の着付けを学ぶ予定です。