2019年度 日本の伝統美「和のテイスト」

フィールドワーク「和文化の魅力がいっぱいの街、寺町通りを楽しむ」

2019年12月14日

本年度2回目のフィールドワークに出かけました。

今回は歴史ある寺町界隈の文化、産業を訪ねるコースです。

寺町通りは、京都のメインストリートのひとつとして知られる河原町通りの西に位置し、桓武天皇の平安京での東京極通として整えられた通りが、時代を経て秀吉のお土居作りに併せて寺々をここへ移転させたことから呼ぶようになったとのこと。観光客で賑わう東山・西山周辺とはまた趣が違い、伝統ある老舗やその伝統を踏まえて新しい文化を発信するお店が連なる、とても素敵な街です。

ここでは、これぞ和の伝承という、和紙・筆、お茶、漆器、針などの老舗のほんものを鑑賞し、その技術を受け継いだ手頃で可愛い小物なども見て歩きました。

スタートは寺町丸太町、京都御所の西南の角、まずは少し前に西陣から移転した和菓子の落雁のお店「UCHU」さんに立ち寄りました。伝統のお菓子の手法を大切にしながらも、新しいカタチ、味の創作をしておられる、今注目されているお店です。

店内には可愛い動物やおしゃれなデザインの落雁がいっぱい、見ただけで思わず笑顔になります。お店の方はこの学Boooの趣旨に共感してくださり、特別に試食をさせてくださいました。いただいたのはジャスミン、抹茶、ほうじ茶味のもので、和三盆の上品な甘さの後に、ふんわりとそれぞれの香りが口の中に広がり、とても和みます。お店のディスプレイもオシャレで、奥の小さなお庭も、京都らしさが感じられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて丸太町通りを渡り寺町通りを南へ。下御霊寺社、革堂(こうどう)と呼ばれている行願寺を訪ねた後、お茶の老舗、「一保堂」さんへ。お店の入口には迎春用のお茶「大福茶」や干支の抹茶の案内も掲げられ、季節を感じる設えでした。創業は享保年間(1717)300年を超える老舗です。

昔ながらの大きな茶壷や年代物の茶箱が置いてあり、玉露、煎茶、抹茶など、日本茶を代表する宇治茶が幾種類も販売されています。それぞれのお茶に付いている銘ひとつにしても「碧雲」「薫風」「松の緑」など、美しい自然、季節などが感じられ、とても落ち着く空間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いては、和紙の専門店、「紙司 柿本」さんへ。こちらも起源が享保年間の1716年とある老舗。日本各地の手すき和紙をはじめ、色紙、短冊、便箋、封筒、懐紙。。。プロの書家や画家が使われる本格的な高級品から子どもにも喜ばれる千代紙まで、さまざまな和紙とその製品がいっぱいあり、見ているだけでも楽しいお店です。引率者も本学の伝道掲示板の「今月の言葉」には、こちらのお店の和紙を使わせていただいており、お店の方ともお顔なじみ。そのご縁もあり、お願いして、和紙についてのミニ講座をしていただきました。産地、材料、作り方、特色などなど、初めて知る和紙の素晴らしさを、メンバーも興味深く聞き入っていました。

(柿本さん、お忙しい中をありがとうございました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次は、お向かいの墨、筆の名店「古梅園」さんへ。室町期から墨造りを営む奈良の古梅園の京都店として創業され、こちらも1714年からと聞く老舗です。店内には墨、筆、硯、紙をはじめ書に使う数々の品があり、用途によって使い分ける筆の種類の多さにも驚きました。手頃な価格のものもありましたが、やはり各地から品質の良い筆を求めて来られるお店だけあって、ゼロの数が多い高級品もいっぱい、一つ一つ職人さんが伝統の技術を生かして手作りされたものだけに、価格も納得です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに南へ歩き、漆器の「象彦」さんへ。こちら寛文元年(1661年)創業の老舗。京漆器の繊細で美しい器や箱類は、まさに芸術品、お店の中は美術館のようでした。古典柄だけではなく異文化を映した意匠や、子ども用のやさしいデザインのものなど、漆器の塗りのぬくもりと蒔絵の美しさ、豪華さを堪能いたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く訪問先は「村上開進堂」さん。明治40年(1907年)創業の洋菓子屋さん、建物も木造漆喰の洋館で店内はガラスケースも調度品もレトロな雰囲気、タイムスリップしたようなお店です。奥には築90年の日本建築のカフェがあります。「ロシアケーキ」の名で有名な、ちょっと柔らかめのクッキーのような焼き菓子をはじめ、昔から変わらない味にファンが多いのも納得です。「好事福慮(こうずぶくろ)」は冬季限定、紀州ミカンに入ったゼリーで大正時代から意匠登録されているそうです。名前も意味深いですね。今は世界のお菓子が楽しめる時代ですが、そんな現代でも存在感のある洋菓子屋さん、これからもこの雰囲気とともにずっと続いて欲しい、そんなお店でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和菓子の「二条若狭屋」さんの「こおり」ののれんに惹かれつつも我慢、骨董屋さんをのぞきながら寺町通りをさらに南下し、御池通りを渡り寺町商店街へ。ここからはアーケードが四条まで続き、観光客も多いエリアになります。天保3(1832)創業、御池煎餅で有名な「亀屋吉永」さんの、季節の生け花も京都らしいお店先を観て、お香、文房四宝から和文具まで楽しめる「鳩居堂」さんへ。季節感あふれる絵ハガキや可愛い一筆箋など、「和のセンス」をゆっくりと楽しみました。

遅い目の昼食として、昭和7年(1932年)創業の「スマートコーヒー」でランチをいただきました。このお店も、いつ行っても表に行列ができているコーヒーの有名店ですが、幸いランチの方は空いていてすぐに二階席に案内されました。木目の美しいお部屋でテーブルクロスも白、これも昔から変わらないスタイルが感じられ、ゆったりといただけました。会計を案内する札にも一言メセージが添えられ、心配りが感じられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食後も寺町通を南へ向かい、お数珠屋さん、古書屋さん、手ぬぐい屋さんなどを観て、最後は三条通りの「三條本家みすや針」さんへ。こちらは創業から400年以上の手作り針の老舗です。

やはりここの針は最高の品質で、一度使うとその使いやすさは歴然、昔から針は「みすや針」というのが京都の定番です。お店はビルのギャラリーの奥、路地を抜けて庭園の向こうの小さな建物の中、扉を開けたら愛想の良いご主人のお父さんと息子さんが迎えてくださいました。顔が一つ一つ違う待ち針の動物たちを拡大鏡で見せてくださったり、細かなアドイスと和やかなお話ぶりで、欲しかった針を買い求めることができ、メンバーも大満足で無事、フィールドワークを終えることができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訪問先のどちらも、お店の方が温かく対応してくださり、ゆっくりと楽しむことができました。また、老舗として伝統を継承するだけではなく、その技術、持ち味を生かしながら常に新しい価値あるものを創出する姿勢も大切にしておられます。

参加したメンバーも初めて知る世界ばかり、これからも機会をつくり、日本の伝統文化の理解を深めてほしいと願っております。