2019年度 日本の伝統美「和のテイスト」

フィールドワーク 

2019年7月14日

今回はフィールドワークとして、洛北の紫野、西陣界隈へ出向き、その地に生まれた伝統文化や史跡を訪ねました。続いて、宵々々山で賑わう四条通へ向かい、日本の三大祭である祇園祭の鉾・山と、夏の「設え(しつらえ)」をしてお客さまを迎える京町家の屏風祭を見学してきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は、臨済宗大徳寺派の大本山、紫野 大徳寺へ。広い境内には法堂、山門などの重要文化財の伽藍と塔頭(たっちゅう)が建ち並び、整然と続く石畳と土塀、松の美しさに圧倒されて歩きました。北大路通りに面していながら、門をくぐれば静かで壮大な別世界、いかにも京都です。
織田信長、前田利家はじめとする戦国武将や歴史上の偉人のゆかりの寺院としても知られる大徳寺、茶道の千利休、三千家墓所である「聚光院」など拝観不可の塔頭を表から見学した後、公開されている「大仙院」を拝観しました。

室町時代に建てられた国宝の本堂や墨蹟、枯山水の特別名勝の庭園について、お話の楽しいお坊様に案内していただいたので、とてもわかりやすく勉強になりました。四季を映すお庭の自然の美しさと様式美、時代を経てさらにまた味わいが出るんだろうな と正座をしていても時間を忘れる心地の良い空間でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門前では、名物「大徳寺納豆」のお店を訪ね、その作り方の大変さを伺いました。大豆に麹で発酵・乾燥をさせた味噌のような味のこげ茶色の保存食は500年ほど前から続く伝統の味、体に優しく元気にしてくれる優良食品でした。

 

 

続いては北隣の今宮神社へ。疫病退散を祈るこの神社の参道には向い合わせに二軒の「あぶり餅」のお店があり、北側のお店の歴史は神社と同じく1000年と言われているとか。京都出身のメンバーもこのお餅は初めて、早速記念撮影が始まりました。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹串にお餅をつけ、きなこをまぶして炭であぶって焼き色をつけ、甘い白味噌のタレにくぐらせた独特の和菓子、おいしくいただきました。代々、女性がこのお餅を供する役割のようで、いつ訪問しても男性はおられず、最長老のお婆さんがあぶり、その脇でお母さん世代が串にお餅をさしながら全体をチェック、娘さん世代が配膳を切り盛りされています。これも伝統なのですね。

 


次は堀川通を南へ進み、紫式部の墓所へ。隣には小野篁のお墓がありますが、通りから細道を西に入ったひっそりとした場所にこんな高名な二人のお墓があることにメンバーもびっくり。平安時代、墓所の北には大徳寺の雲林院があり、今でも紫野という皇室・貴族ゆかりのこの地で紫式部は生まれ育ったとも。

続いて堀川通のすぐ東側、小川通りを南に向かい、茶道の裏千家と表千家を表から見学、隣り合わせで雰囲気の全く異なる玄関を観て、それぞれの邸内お茶室、今日庵と不審庵がどんなお茶室なのだろうと思いを馳せていました。

さらに堀川通りを南へ歩き、「西陣織会館」へ。ここでは入口には「村雨御所跡」と「西陣」の石碑がありました。村雨御所は豊臣秀次の母が秀次の菩提を弔うために創建した寺院で、昭和37年に滋賀県近江八幡に移築されたとのこと。西陣あたりは、以前は白雲村・村雨村と呼ばれており、平安時代に朝廷の役所「織部司」のもとに絹織物技術者を集めて組織したのが起こりとなって日本の高級織物の中心地となったとか。応仁の乱で焼け野原となった後も、避難していた職手が西軍の陣のあったこの地に戻って座を復活して再興したとのこと。幾多の苦難を乗り越え、伝統を守り、次代へつなごうとする古人のパワーと使命感…。日本の伝統産業を守ってきた街の人たちの熱い思いを感じました。

会館には繭から生糸、さらに絹糸、織物になるまでの大変な工程が展示されており、素晴らしい技術で作り出される本物の着物や帯、和服が何代も受け継がれる所以がよく理解できました。伝統工芸士として手機の実演をされていたご高齢の女性が、今回もお元気で機織りをされているのにお会いでき、嬉しく見学させていただきました。

1200個の繭や真綿で作ったヒツジ、サル、トリ干支の展示も可愛くて見応えがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、毎年お邪魔している京菓子の老舗「鶴屋吉信」さんで和菓子制作を見学。カウンター越しに職人の方から和菓子の「意匠」「季節感」「吉祥」などについての説明と、目の前で和菓子作りの工程を見せていただき、掌の中でお菓子にでき上がっていくその技術の素晴らしさ、美しさにため息。また、職人の方たちの和菓子への深い愛情を知り、これからは小さなお菓子一つひとつに込められた職人さんの思いを感じて食したいと思いました。できあがったのは「紅花」と「石竹」。季節を感じるお菓子とお抹茶をおいしくいただきました。ビルの階上に造られた坪庭の緑に雨が優しく滴る風情、心静かなひと時に、また一つ和の文化の素晴らしさを学ぶことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いては、堀川戻り橋の晴明神社を訪ねました。平安期の天文学者、陰陽師の祖といわれる安陪晴明を祭る神社ですが、応仁の乱以降は敷地も縮小、荒廃したものを

近年に復興したとのことで、特に最近はパワースポットや占いを好む女性ファンが多いようで賑わっています。一の鳥居には神社名ではなく陰陽道の晴明桔梗(五芒星)が掲げられ、京都の歴史を感じる見慣れた神社とは少し違う雰囲気、境内には桔梗が植えられており、涼しげな華を咲かせていました。

 

そして、この日の最終訪問地、祇園祭(前祭の)宵々々山が始まった四条通へ向かい、

四条堀川から四条通を東へ歩き、四条綾傘、蟷螂山、郭巨山、新町通に入り、放下鉾、船鉾、岩戸山、また四条通に戻り月鉾、菊水鉾、鶏鉾、函谷鉾、最後に長刀鉾を鑑賞しました。山鉾は33基あり、観て歩けたのはほんの一部でしたが、各鉾町の町会所(町家)に飾られた山や鉾のご神体や歴史ある豪華な懸装品、それぞれのお宅に飾られた屏風などを鑑賞しました。山鉾の囃子方の祇園囃子と、その山鉾の元で子供たちが厄除け粽を勧める唄を聞きながら、日本が世界に誇る伝統美、「動く美術館」とも称されるこのお祭りに触れ、京都の夏の風情を満喫しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日は、体調を壊したりで欠席者が相次ぎ、少ない参加者となり、また生憎の雨でしたが、お寺の庭の青葉をしっとりと濡らす優しい小雨、お祭りに活気づく町家の軒を賑やかに叩く通り雨と、同じ雨さえも違う風情を感じることがきました。

「和・研」では今年度も世界に誇れる日本の文化に触れ、その美意識から豊かな感性と教養を身に付けていきたいと考えています。

前期の活動

2019年7月9日

日本の伝統美「和のテイスト」研究会、6年目になりました !! 

「和・研」では今年度も世界に誇れる日本の文化に触れ、その美意識から豊かな感性

と教養を身に付けていきたいと考えています。

1回目は4/26のお昼休みに集合、今年度から新たに参加してくれたメンバー

とともに、これからの活動について打ち合わせをしました。

1つ目のテーマは和装(きもの)について。毎年実習しているのが本学所有の「十

二単衣(女房装束)」を用いての着付けの「作法」ですが、最初は身近な浴衣の着付けから学びます。祇園祭の宵山に間に合いますように。。。

そして、きものの扱いに慣れてきたら、後半はいよいよ十二単衣の着付け(衣紋)へ。こんな素晴らしい装束に直接触れられる機会は、京都の大学でも稀少。じっくり、しっかりと学んでいきたいと思います。

2つ目はフィールドワーク。祭礼見学、舞台芸術鑑賞、伝統文化・工芸品の見学な

どを計画中です !! 京都光華だからこその学びの環境を活かして、どんどんホンモノに触れていきます。

さらに、毎年「心静かに打ち込める時間」として好評の「書(しょ)」の稽古にも励

みたいと考えています。毛筆・墨による「書」の濃淡・空間の美しさや躍動感を知り、社会人として身に付けておいてほしい、「筆で字が書ける」ことをめざします。

和装はきものや帯と小物の種類、着る際の約束事や組み合わせ、扱い方など、知っておくべきことがいろいろとありますが、基本の知識さえあれば、その人のセンスを活かした組み合わせが限りなく広がる世界です。今や、国際的な場での日本の「KIMONO」の存在感と美しさは注目と憧れの的です。そんなきものという伝統文化に誇りをもって、日本の四季、行事、TPOに合わせ、自分らしい装いができるように、基本から学んで行きたいと思います。

その第一歩として、早速、5/7の第2回目から第6回まで5回続けて浴衣の着付けを学びました。学科によって授業終了時間が異なるため、グループに分かれて活動をすることとなりました。

皆さん、きものを着る機会はほとんどなく、浴衣を着たことがある程度ですが、きものへの興味と憧れはいっぱいで、前年度からのメンバーがリーダーとしていろいろとサポートをしてくれ和気あいあい、今年度も学科学年を超えての学Boooならではの学習ができそうです。着付けのコツもつかんだ様子でした。

とは言え、1回や2回では「体に沿う」和装の着こなしは難しいもの、まず浴衣で暮らす機会をつくって きものに慣れること、同時に美しい身のこなし方も発見できるようになってほしいものです。

次回は7/14フィールドワークを予定しています。洛北の紫野、西陣界隈へ出向き、その地に生まれた伝統文化や史跡を訪ねます。続いて、宵々山で賑わう四条通へ向かい、日本の三大祭である祇園祭の鉾・山と、夏の「設え(しつらえ)」をしてお客さまを迎える京町家の屏風祭を見学したいと計画しています。